ピロリ菌は胃の粘膜に生息している、らせんの形をした細菌です。
ヘリコバクターの「ヘリコ」は、らせん形(ヘリコイド helicoid)から命名されており、ヘリコプターの「ヘリコ」と同意です。
胃の中は強い酸性で保たれているため、細菌はいないと考えられていました。
しかし、1980年代に胃粘膜の中に生息する「ピロリ菌」の存在が明らかとなり、この菌によって胃炎や胃潰瘍などが引き起こされていることが判明しました。
日本のピロリ菌の感染率は、上下水道が十分完備されていなかった時代に生まれた団塊の世代以前の人では約80%前後と高くなっています。
ピロリ菌は本来感染力の弱い細菌ですが、口から感染すると推定されています。
感染経路は環境因子や家族内感染など様々な要因が考えられています。
衛生環境がよくなった現在では、ピロリ菌感染者の唾液を介した感染が考えられています。
※ピロリ菌と胃がんは関係ある?
胃がんとピロリ菌は密接に関連しているといわれています。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎などの患者さんを対象とした調査では、10年間で胃がんになった人の割合がピロリ菌に感染していない人では0%だったのに対し、ピロリ菌に感染している人は2.9%だったとの報告があります。
ピロリ菌を除菌すると、新しい胃がんが発生する確率を減らすことができる可能性があります。
早期胃がんの治療後にピロリ菌を除菌した患者さんは、除菌をしなかった患者さんと比較して、3年以内の新しい胃がんの発生が約1/3だったと報告されています。
ピロリ菌の検査には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を使用する方法と使用しない方法があります。
内視鏡を使用する方法には①迅速ウレアーゼ試験②鏡検法③培養法があります。これらの方法では、内視鏡で採取した胃の組織を用います。
内視鏡を使用しない方法には①抗体測定②尿素呼気試験③便中抗原測定があります。
ピロリ菌の検査は、これらのうち、いずれかを用いて行われますが、1つだけでなく複数の検査を行えばより確かに判定が可能です。
ピロリ菌の除菌療法とは、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3剤を同時に1日2回、1週間服用する治療法です。
すべての治療が終了した後、4週間以上経過してからピロリ菌が除菌できたかどうかもういちど検査をいたします。
除菌治療に伴う副作用で最も多いのが下痢や軟便で、約10~30%の割合で起こります。
食べ物の味がおかしく苦みや金属のような味がすることが5~15%、皮膚に異常が現れることが2~5%起こります。
最初の除菌が芳しくない場合は、抗生物質の組み合わせを変えて2次除菌、3次除菌を行うこともあります。
1回目の除菌療法でピロリ菌が除菌できなかった場合は、2種類の抗菌薬のうちひとつを初回とは別の薬に変えて再び除菌療法を行います。
この方法で行う2回目の除菌療法は約80%を超える確率で成功します。
1回目と2回目の除菌療法を合計した除菌率は95%を超えます。
また、除菌が成功した後にピロリ菌に再び感染することがありますが、その頻度は年0.1~2%程度です。
早期の診断は、健康への第一歩です。
お気がかりの方は是非当院までお気軽にご相談下さい。